今日はこちらの書籍の紹介と書評です。
また実際の企業のサイトなどで生のデータも合わせて読むのもオススメです。
決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業
著者の長谷川正人さんの書籍は前作「ヤバい決算書」も以前に読んでいました。
今回の書籍も同様に実際の企業のデータを扱っているので、とても面白く読み進めることができました。
ざっくりどんな内容?
普段、私たちがイメージしている企業の「本業」。
その「本業」が時代の流れに伴って「副業」になってしまった、もしくは消滅してしまった企業もあります。
そして社名からは想像できない、意外な事業が「本業」になった企業も。
そうした企業の具体例を知ることができます。
今回は書籍の内容と、私が企業の公式サイトから感じた点も含めて記事にしてみました。
具体的な企業例
ソフトバンクグループ
もはやこの手の書籍に常連の企業ですね。
それだけ特徴的な事業構造をもつ企業ということでしょう。
ソフトバンクと聞けば「携帯会社」だよね
イメージとしては真っ先に思い浮かぶ言葉です。
「ボーダフォンの携帯を使ってたらいつのまにかソフトバンクになった」なんて思い出す方もいるかもしれませんね。
そうです、ソフトバンクはボーダフォンの日本法人を買収して、日本の携帯電話事業に進出することになりました。
そのあと米国携帯電話会社スプリント、英国半導体設計大手アームを買収することになります。
驚くのは買収金額の高さ。単位は「兆」単位です。
アームの買収には孫正義社長の並々ならぬ思いがあったようです。
巨額買収のあとには「のれん」が計上されています。
ソフトバンクの会計基準はIFRSです。
したがって日本基準の「のれん」の定期償却ではなく、一気に「のれん」の減損が計上される可能性もあります。
もはや「ソフトバンクは携帯会社」と単純には答えられないですね。
そしてドコモやauとも単純に比較することもふさわしいとは思えません。
なぜなら事業領域がどんどん拡大しているからです。
富士フイルムホールディングス
今や写真を撮るツールはスマホという方も多いのではないでしょうか?
もしくはデジカメでしょうか。
「富士フイルム」という社名から思い浮かべるのは、やはりカメラ関連ですよね。
富士フイルムにはイメージング・ヘルスケア&マテリアルズ・ドキュメントの3つの事業領域があります。
(カメラ関連はイメージング事業に含まれます)
ドキュメント事業は「富士ゼロックス」の事業がメインになっています。
富士ゼロックスは子会社であり、そのため、連結の業績に反映されます。
そして、そのドキュメント事業とヘルスケア&マテリアルズ事業が、今の富士フイルムグループの稼ぎ頭となっています。
公式サイトでIR情報を見ると、2017年度決算でドキュメント事業には「構造改革費用等一時費用」が計上されています。
これはいわゆる「リストラ費用」でしょう。
日立造船
この書籍を読んで一番驚いたのは「日立造船」
なんと船舶事業を売却していました。(船舶セグメントは2006年3月期を最後に消滅)
そして現在の事業は環境・プラント事業が大きなシェア(売上ベースで全事業の6割超)を占めています。
他の事業としては機械事業・インフラ事業などがあります。
また以前には、日立造船の子会社が運営していた「旅の窓口」を楽天へ売却しています。
「旅の窓口」は現在の「楽天トラベル」となっています。
そして「旅の窓口」の売却額は300億円強で、船舶事業の売却額300億円弱を超えています。
アマゾンドットコム
アマゾンといえばネットショッピングでよく使われる方も多いと思います。
しかし、アマゾンの収益構造はそのネットショッピングに関する事業(以下、EC事業)で稼いでるわけではなく、AWSという事業が利益の柱になっています。
AWSというのは”Amazon Web Services”の略です。主に企業向けのクラウドサービスですね。
グローバルなEC事業(日本含む)では赤字になっている年度もあります。
アマゾンのビジネスモデルは特徴的なので、アマゾンだけに特化した書籍もたくさん出版されていると思います。
H.I.S.(エイチアイエス)グループ
H.I.S.は格安旅行会社。
しかしH.I.S.を語るに、今はそれだけでは不十分です。
余談ですが、私は以前に、旅行業界を就職先として目指していたことがあります。
国家資格である「一般旅行業務取扱主任者(現、総合旅行業務取扱管理者)」を取得したのも、それが理由です。
旅行業界は薄利多売。利益を出すには、たくさん売るしかない。
これは業界研究を進める中で知ったことです。
話を戻します。
H.I.S.は長崎のテーマパークである「ハウステンボス」を2010年に子会社化しました。
ハウステンボスは当時、赤字経営でした。そこを再建したわけです。
このハウステンボスグループの事業が功を奏します。
驚くべきは再建後の収益性。東京ディズニーリゾートと同水準という高さです。
現在の柱は「旅行事業」と「ハウステンボスグループ」です。
そこに「ホテル事業」やその他事業が続きます。
ちなみに2017年度決算での営業利益率では「旅行事業」は2%弱に対して、「ハウステンボスグループ」は20%強です。
ベネッセホールディングス
2014年に進研ゼミの大量の顧客情報流出事件が発生したことは私も強く記憶に残っています。
その事件以前から会員数の減少は始まっていましたが、事件後はさらに減少し、国内教育事業の利益率も低下していきます。(現在、会員数は回復傾向)
売上では国内教育事業が50%程度を占めていますが、営業利益率としては介護・保育事業のほうが高く、収益の柱になっています。そして海外事業も貢献しています。
楽天
「楽天市場」でおなじみの楽天です。
アマゾンと並び、利用している方も多いのではないでしょうか。
楽天の事業は大きく2つに分かれます。
ひとつはインターネットサービス事業であり、もう一つはFinTech事業(金融事業)です。
「楽天市場」はインターネットサービス事業に含まれます。また「楽天ブックス」や「楽天トラベル」などもインターネットサービス事業です。
FinTech事業については、インターネットサービス事業の営業利益率を上回っています。
中でも「楽天カード」の利益が大きいようです。
そして楽天カードの普及により、楽天市場での消費もうながせると考えてるようですね。
気になるのはアマゾンとの比較です。
筆者は単純に比較はできないと述べています。
それはもうおわかりだと思いますが、企業全体の比較をするにしても事業構造が違います。
そしてEコマースの形態についてもアマゾンは自らの販売が主体であり、楽天は楽天市場内のテナントが販売を行うのが主体です。
楽天の売上になるのはテナントからの手数料などであり、単純な商品の売上ではありません。
今後の注目は国内4番目の参入となる携帯電話事業ですよね。
イオン
イオンといえば少し大きなスーパー。
しかし、現在のイオンの利益の柱は総合金融事業とディベロッパー事業です。
GMS(総合スーパー)事業の利益は超低空飛行で赤字スレスレです。
金融事業の中でも特に「クレジット事業」が利益を稼いでいます。
イオンカードの勧誘などのキャンペーンが大きな意味を持っていたのですね。
サッポロホールディングス
サッポロといえば「ビール」というイメージですね。
とはいえ、現実では「国内酒類事業」の営業利益率は低く、その代わり「不動産事業」の営業利益率が高くなっています。
そして不動産事業の中心は「恵比寿ガーデンプレイス」です。
恵比寿ガーデンプレイスのある場所は、もともとサッポロの恵比寿工場があったそうです。
(私は知りませんでした。。)
フジ・メディア・ホールディングス
フジといえば少し前に読んだ、村上世彰氏の「生涯投資家」にもライブドアのニッポン放送買収の話として挙げられていました。
そして、フジ・メディアも「都市開発事業」の利益率が「放送事業」の利益率を上回っています。
TBSも不動産事業が好調のようですね。
LINE
スマホを利用している方は、ほとんどみなさん、LINEを利用しているのではないでしょうか?
私はあまり利用したくなかったのですが、いつのまにかスマホにアプリが入っています(笑)
売上ベースでは広告収入(広告事業)の割合が増えてきています。
各企業が広告を出稿することが多くなっているわけですね。
そしてインターネット関連は原価率が極端に低い、また大規模な設備投資もあまりないので、キャッシュも貯まっていくそうです。
上場し、公募増資で1,300億円弱のキャッシュ(現金)を獲得し、必要最小限の投資をして、残りはプールされているわけです。
クックパッド
私は利用したことはありませんが、利用者は既婚女性が圧倒的に多いそうです。
利益の柱は会員事業と広告事業。
売上の構成比としては会員事業のほうが高くなっています。
そしてクックパッドもLINEと同じようにキャッシュリッチな状態にあります。
まとめ
自分が今まで持っていた企業イメージとは違う領域・事業で、現在は利益を稼いでいる企業がたくさんあることを知ることができました。
気になった企業はその企業の公式サイトで、IR情報をこまめに調べてみるのも面白いです。
また簿記・会計や財務分析の勉強にも役立つのでオススメです。
ひろりん
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