2021年6月20日に開催された漢検準1級に2回目の挑戦で合格しました。1回目の受験は3年前の2019年でした。

今回の記事は合格体験記ですが、論点ごとに、どこに力を入れて、また力を抜いて勉強すべきなのか、詳しく書いたつもりです。そして、近年の漢検準1級は「この問題集だけをやれば合格する」という勉強法が通用しにくくなってきました。
ここに書いた方法は、あくまでわたしが試行錯誤して編み出した勉強法です。合う合わないがあると思いますが、自分に合いそうな部分だけでも盗んで帰ってください。すべてマネする必要はありません。
今回の得点分析
最終的な得点は166点でした。合格点は160点なので、わずか6点の差です。漢検協会から届いた結果資料をもとに、得点を分析してみます。
大問 | 自己採点 | 正式結果 |
第1問 | 28点 | 29点 |
第2問 | 9点 | 9点 |
第3問 | 10点 | 10点 |
第4問 | 6点 | 6点 |
第5問 | 36点 | 36点 |
第6問 | 6点 | 6点 |
第7問 | 26点 | 24点 |
第8問 | 18点 | 18点 |
第9問 | 14点 | 14点 |
第10問 | 14点 | 14点 |
結果資料では第1問(読み)と第7問(四字熟語)で自己採点の得点と相違がありました。
第1問(読み)で出題された問題
掠略
わたしは「りゃくりゃく」と回答しましたが、標準解答は「りょうりゃく」となっていました。しかし、ここは「りゃくりゃく」でも正解になっていました。
第7問(四字熟語)で出題された問題
門前(じゃくら)
ここは正解したと思っていましたが、不正解でした。調べたところ、正解は「雀羅」ですが、わたしは「雀」の漢字を間違えて覚えていました。ここで確認をしていなければ、今後も気づくことができませんでした。試験後の確認は大事ですね…
勉強優先順位
まず「共通の漢字」と「誤字訂正」の分野は得点源にはふさわしくない論点となります。というのは何が出題されるかわからない、本当に未知の分野だからです。
問題集に収録されている問題をマスターしても、その見返りはあまりありません。最後の最後、他の論点をマスターして、余裕があれば、問題集で対策をするくらいでもよいと個人的には思います。
反対に、最重要論点は「四字熟語」です。この「四字熟語」を落とすと、かなり合格から遠のきます。30点分の配点もある、非常に大きな論点です。そして対策をすれば、確実に得点できる論点でもあります。さらに、四字熟語を勉強すると、他の論点でも同じ漢字が度々出てくることがあり、大きな相乗効果があるのです。
「読み」と「書き」についても基本的にミスを最小限にする必要があります。未知の熟語が出題される場合もありますが、問題集で対策できる熟語をくまなく正答できれば、問題ありません。
というわけで、わたしがオススメする優先順位は下記のとおりです。
第1位:四字熟語
第2位:読み
第3位:書き
第4位:故事・成語・ことわざ
第5位:対義語・類義語
第6位:文章題
第7位:誤字訂正
第8位:共通の漢字
論点別勉強法
長期記憶に残すために、がむしゃらに問題集を解くのではなく、工夫しましょう。上記の優先順位に沿って書いていきます。
四字熟語
まずは下記の問題集の四字熟語をすべて覚えましょう。ただ、すべて覚えても、四字熟語に関してはまだまだ心細いです。
次に、本試験型問題集の各回の四字熟語をすべて覚えて、さらに巻末の四字熟語の資料をすべて覚えます。巻末の四字熟語の資料までを完璧にすれば、本試験でも四字熟語の論点は8割は取れるはずです。
四字熟語を覚える作業は非常に苦痛な作業になります。それを面白い作業にするためには、その四字熟語の「背景」を勉強しましょう。今や、ネットで意味や背景をすぐに調べることができます。これを利用しない手はありません。
また漢検公式の四字熟語辞典があります。準1級では必ずしも必要とは思いませんが、1級を目指すのであれば必要かと思います。
読み・書き
あえて「読み」と「書き」を同じくくりとしました。それは「読み」として覚えた漢字が「書き」で出されたり、「書き」で覚えた漢字が「読み」で出されたりするからです。
気を付けるべきは「読み」で覚えた漢字が「書き」で出されるケースです。これに対処するには、「読み」の問題を解いているときにも「書き」を意識しないといけません。
例えば今回の本試験では「稗史(はいし)」や「汀渚(ていしょ)」を書かせる問題が「対義語・類義語」で出題されました。ともに、わたしは「読み」の対策はしていましたが、「書き」の対策は意識していませんでした。結果的に正答を書くことはできましたが、正直なところヒヤッとしました。
おそらく勉強を始めた当初は、ほとんど読めない、書けないと思います。2級まではなんとなくでも、結構正解した方も多いのではないでしょうか。しかし、準1級になると、今まで触れたことのない漢字がたくさん出てきます。
読み・書きに関しては、もう毎日触れるしかありません。少しでも時間ができたら、問題集を開いて「声」を出して読んで書く。大きな声でなくて構いません。その声を自分の耳で聞くことに意義があるのです。漢字のリズムを感じましょう。
そして「書き」に関して、たくさん書きすぎて時間を浪費しないようにしましょう。とりあえず、2,3回書いて、次の漢字に進む。どんどん進む。そして数日後にまた戻って、2,3回書いてみる。もう大丈夫と思ったら、今度は書かない。頭でイメージするだけでよいと思います。そうして、書く漢字をどんどん減らしていってください。
最後に、わからない熟語の「読み」が出題されたときの、ひとつのテクニックを紹介します。わからないから「空欄」にするのだけはやめましょう!
碩師
この例の場合、「師(し)」は読めるはずです。ただ、「碩」が読めないときにどうしますか?「空欄」にしてしまいますか?本試験では1点でも2点でももぎ取りましょう。
例えば「石」に注目すれば、「いし」もしくは「せき」と読むことができます。「いしし」と読むのはなんだか不自然な気がしませんか?「せきし」ではどうでしょうか。なんとなく正解のような気がしますよね。正解は「せきし」なのですが、このように部首をヒントにして回答を埋めることで、正解してしまうことも多々あります。
あともうひとつ、絶対にしてほしいことがあります。それは「許容字体」の確認です。
特に「書き」の問題ですが、簡単に覚えやすい「許容字体」を確認しておくことで、学習負担がかなり軽くなります。漢検マスター問題集の別冊には「許容字体」も記載されているので、必ず確認してください。
故事・成語・ことわざ
基本的には問題集に掲載されている問題をすべてマスターしてください。
また、ここでも注意することがあります。例えば次のことわざです。
三軍も帥を奪うべきなり、匹夫も志を奪うべからず
わたしが問題集で対策していたのは「匹夫」の語句でした。
しかし、本試験で出題されたのは「帥」の語句でした。
三軍も(すい)を奪うべきなり、匹夫も志を奪うべからず
このようなことから、問題集で問われている語句だけではなく、ことわざ全体の語句を確認するようにしてください。
対義語・類義語
近年この論点は難化してきています。ただ、それでも問題集に掲載されている問題をマスターすることが、合格のための大前提になります。
そして論点の垣根をこえて、「読み」や「書き」で問われていた熟語が、この「対義語・類義語」の論点で出題されることもあります。その反対もしかりです。この論点でも、本試験では未知の熟語に遭遇することが多々あります。そのときは推測しましょう。
脆弱←→( )
この例で「対義語」を回答する場合、選択肢から「きょうじん」という語句を選んだとします。「脆弱(ぜいじゃく)」の「弱」から連想すれば、「きょうじん」の「きょう」は「強」と連想することができるのではないでしょうか。「じん」は「靭帯(じんたい)」から連想できる方もいるでしょう。それを合わせれば「強靭」と回答できる可能性は十分にあります。
文章題
問題を解くときに、すべての文章を読む必要はないと思っています。ただし、わからない語句の場合は別です。前後の語句や文章で推測できる場合があるからです。
文章題に関しての特別な対策をする必要はなく、その他の論点の対策で十分だと思います。「小説を読むことで対策になる」ことも聞きますが、読書習慣がない人が短期的に読書して、その対策ができるのかというと、わたしは疑問です。付け焼き刃的な対策は、あまり意味がないように思います。
誤字訂正
優先順位でも書きましたが、対策がしにくい論点であり、なかなか得点にも結び付かない論点です。「誤字訂正」や「共通の漢字」の対策に時間をかけるのであれば、他の論点(例えば四字熟語など)に時間をかけたほうが合格に近づくと思います。
共通の漢字
「誤字訂正」と同様に、対策がしにくい論点です。しかも近年難化しています。本試験でも前半にくる論点で、解けないと焦りますが、できなくても気にしないでください。その分、他の論点で得点を稼ぎましょう。
問題集・アプリ
あらゆる手段を使いました。
合格のために必須の問題集
最優先で取り掛かるべき問題集です。
この問題集は通称「カバー率」と言われて、たくさんの受験生また合格者が愛用している問題集です。過去の出題データに基づき、レベル別に問題が掲載されています。レイアウトも見やすく、漢字の意味も記載されている(一部記載されていない論点もあります)ので、辞書をひく手間がほとんどありません。
この問題集をやらずして、合格は見込めない。とも思える問題集です。
今回紹介する問題集の中では一番難易度が高いです。ただ、本試験のレベルはこのレベルだと思ってください。
定番の「カバー率」問題集と同様に、この「本試験型」問題集も、合格のためには必須の問題集です。本試験形式で18回分を勉強できるほか、巻末には四字熟語をまとめた資料があります。この四字熟語の資料は本当に役立ちます。難しい四字熟語もありますが、ここまで覚えれば本試験でも四字熟語の論点で、8割は得点できるかと思います。
合格をさらに近づける問題集
この問題集はレイアウトが非常に見やすく、使いやすい問題集です。2級を勉強した際には、旺文社のこのシリーズの問題集で合格できました。難易度的には「カバー率」問題集よりは簡単です。
上記2冊の必須の問題集からの「漏れ」をなくす意味での使用でした。巻末には四字熟語とことわざの資料も付いています。
試験直前に投入した問題集です。
本試験形式で20回分を解くことができます。レベル的には、同じ本試験形式の必須の問題集よりは簡単です。試験直前ということもあり、9割の得点率を目指して解きました。この問題集でも、これまでの「漏れ」をなくすことを心がけました。
勉強を助けてくれたサイト・アプリ
漢字検定準1級 無料練習問題
非常に使いやすいサイトで、Androidスマホのホーム画面にリンクを貼っておいて、ほぼ毎日利用させていただきました。
またiOSではアプリも提供されているので、わたしはiPadでもインストールして勉強していました。
四字熟語の百科事典
漢検準1級合格のカギは四字熟語だと思っています。
意味がわからない、未知の四字熟語に出会った際には、このサイトをよく利用させていただきました。具体的な「使い方」や「例文」もあり、四字熟語をよりイメージしやすくなります。
ことわざ・四字熟語・難読漢字 学習小辞典
こちらも主に四字熟語の意味を調べるために利用していました。
辞書 by 物書堂
漢検の漢字辞典を購入できてデジタルで利用できます。紙の辞書もありますが、デジタルのほうが安いです。わたしはiPadでデジタル辞書を利用していました。
工夫したこと
Googleフォームとスプレッドシート
本試験形式の問題を解いた際に利用したのが、無料で使えるGoogleフォームとスプレッドシートです。また答案用紙はiPadにダウンロードしておいて、そこに書き込みをして採点しました。その答案用紙を画像としてGoogleドライブに保存しました。
下記のようなGoogleフォームを作り、プルダウンで得点を記録できるようにしました。得点の記録は主に、iPadから行いました。
また、最後に採点済の答案用紙を添付できるようにして、スプレッドシート内で紐づけもできるようにしました。
ちなみに採点済の答案用紙はこのようなものです。
このように記録していくと、最終的にGoogleスプレッドシートに自動的に、すべてまとめられていきます。答案用紙はGoogleドライブに保存されているので、スプレッドシート内のリンクをクリックすると、答案用紙を表示することができます。

四字熟語カードの作成
これはサイズ1:1のカードに四字熟語とその意味を書いて、スマホでいつでも見られるようにしたものです。Canvaというツールを使って100枚作成しました。Canvaの使い方については別記事にもしているので、よければご覧ください。

画像として保存して、スマホのギャラリーアプリで眺められるようにしました。作成過程で四字熟語と意味を詳細に調べることになるので、それだけでも記憶に残ります。
虎の巻
勉強も終盤になってくると、ミスしやすい問題がわかってきます。それらの弱点をまとめて漢検準1級_虎の巻(PDFが開きます)を作成しました。
「十干十二支」については非常に覚えづらいので、このまとめは役に立ちました。
序盤から作ってしまうと膨大な量になってしまうので、終盤で量が絞られてからの作成がオススメです。試験直前はこの虎の巻をメインに勉強を進めていきました。
まとめ
合格のカギは「四字熟語」の攻略です。また「読み」の問題でも書けるようにしましょう。そして本試験では最後まで答えをひねり出すこと。できる限り空欄にしないことです。
わたしの対策はやりすぎかもしれませんが、やりきった感はあります。すべてをマネする必要は全くありません。良さそうなものがあれば、ご自身の勉強に取り入れてみてくださいね。
ひろりん
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